2014年6月27日金曜日
上棟式の期待と緊張
家づくりに関わる人々が集い、どうか良い家になりますように、工事の安全と家の無事を祈る上棟式。建前、棟上げとも言います。
家づくりの全行程からすれば3割程度の時点で行われるので、素人考えでは本格的な工事に先がけ行うと思いがちですが、棟梁からすれば家づくりの最大の山場なのだとか。とくに手刻み加工による木組みの家では、期待と緊張がいっそう高まります。
図面に従い用いる木を選び、墨付けを行い、継手や仕口は丁寧に手刻みする。機械加工ならあっという間ですが、家一棟分の手刻みには相当な時間がかかります。まさに気の遠くなるような作業。30坪ちょっとの家で、墨付けと手刻みに3ヶ月弱を要したこともあります。
上棟の日、こつこつ丁寧に仕上げた材料が組み合わされ、家のカタチが整っていきます。無形から有形へ、想い描いた家が出来上がっていくのは大きな喜びでしょう。生まれたばかりのわが子が育っていくのを見るのに似ているのかもしれません。同時につくり手にとっては、図面の読み間違いはないか、加工の具合はどうかなど、それまでの仕事の出来が問われるときでもあります。難しく手間がかかる仕事ほど緊張し、その分期待も喜びも大きくなる。上棟式とは、まさしく大工にとっていちばんの晴れ舞台なのです。
近頃、上棟式はだいぶ簡略化されています。餅まきや投げ銭をするのはごく少数で、式すら行わないことも珍しくありません。それは、家づくりの効率化が進むのと無縁ではないと言えます。さほどの困難や緊張もなく、それなりに期待通りの家が簡単に出来るから、祝う気持ちや願いも薄れているのかもしれません。
しかしどんなに効率化されても、家づくりは一生に一度の大仕事であることに変わりはなく、わが家に託す願い、期待にも今昔の違いはないでしょう。
家づくりへの気持ちを改めて見つめなおす。そんな意味でも上棟式を行うのは大切な気がします。
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