大阪空港から電車を乗り継ぎ、河原町駅に着いたのは11時過ぎ。
祇園花見小路の景観に「うほぉー!」と声を上げ、
40がらみのオヤジ3人ではほぼダミ声ですが、思わず声が出たことからその感動をお察しください。
襖一幅を見るたび異様なテンションの私たちを相手に、丁寧に応じてくれた〈丸二〉の皆さんにはただ感謝するばかりです。
襖一幅を見るたび異様なテンションの私たちを相手に、丁寧に応じてくれた〈丸二〉の皆さんにはただ感謝するばかりです。
ギャラリーではじめに目に飛び込んだのは、桃色の紙に『花兎』(はなうさぎ)という文様が刷られた一幅。
これがパッと目をひいた『花兎』 〈丸二〉さんのギャラリーでは、襖に仕立てられた『からかみ』が堪能できます。 |
決してピンクじゃありません。さらに「地引」というつや消し加工が施してあるので、派手さは感じずどこか儚げで上品さがあり、花と兎の意匠が似合います。
応対してくれた〈丸二〉の高畠さんが襖一幅ごとの文様を説明してくれるなか、3人が同時に「おおっ!」と声を上げたのが、『栖鳳桐』(せいほうぎり)という文様が刷られた一幅です。
右上と左下の文様が斑になっているのがわかりますか? |
目に留ったのは、文様がただならぬ雰囲気を見せていた点で、よく見ると桐文様ひとつひとつが斑に変色しています。一幅の襖には桐文様がいくつか置かれますが、見方によってはひとつひとつが別の文様のようにさえ見えます。
斑な変色に醜くさはなく、文様の中に別の文様を描くようにも見えます。
銀が黒く変色した部分や、銀と黒の境には赤や青、緑色もあります。
つまり変色したように見えたのは、銀が硫化したことで生じたものです。
その襖は仕立ててから2年ほど経つたらしいのですが、その間にギャラリーの空気中の化合物に反応し、文様のなかに文様を描き出したのです。
その襖は仕立ててから2年ほど経つたらしいのですが、その間にギャラリーの空気中の化合物に反応し、文様のなかに文様を描き出したのです。
この理屈に納得できたとき、数寄者3人は声一つ出せませんでした。
襖に純銀箔押し!?
それだけでも驚きですが、銀の化学反応を見越して文様の変化を楽しむことが考えられているのです。
しかも銀の硫化反応は一定ではなく、その襖が置かれる場所でさまざまに変化します。
襖に純銀箔押し!?
それだけでも驚きですが、銀の化学反応を見越して文様の変化を楽しむことが考えられているのです。
しかも銀の硫化反応は一定ではなく、その襖が置かれる場所でさまざまに変化します。
「つまり、この襖紙でうちだけの“いぶし銀”を育てる・・・つーこと?」
『栖鳳桐』の襖の前に跪き、しばらく沈黙していた私は、誰に聞くともなくつぶやきました。
「そうですねぇ」と、こちらの驚きをよそに穏やかな笑みで返事をした高畠さんの表情は、いまも忘れられません。
結局、『栖鳳桐のからかみ』は、新居の玄関ホールに面した襖に誂えることで満場一致。
施主も設計者も職人も、一幅の襖に関わるみんなが最高のものに出会えた喜びに満足していました。
施主も設計者も職人も、一幅の襖に関わるみんなが最高のものに出会えた喜びに満足していました。
その後、他の襖に使う『からかみ』選びに迷い、その場ですべて決定とはいきませんでしたが、迷うこともまた楽し。
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