2014年11月11日火曜日

障子は和の家のものか



吉村順三は、日本の伝統とモダニズムを融合させた建築家です。
機能性を追求したデザインはモダンではあるけど、どこにいても居心地が良いと評されるのは彼が日本人の生活文化を徹底的に検証し、木の温かみが生きる簡素な生活空間づくりを追求したからといわれます。

彼の作品は建築だけでなく、椅子照明、そして建具にも及びますが、今回紹介したいのは障子です。
「吉村障子」と呼ばれるそれは、框(障子の外枠)と組子(格子になる縦横の材)の寸法を18ミリに統一したもので、複数の障子を立てたときに1枚に見えるようにしています。框と組子の寸法に差があると障子一枚一枚が際立つけど、同寸なら一体化できるというわけです。
通常、組子は框より細いので、組子が太い吉村障子はゴツい印象があります。しかし大きな開口部に複数枚が立つと、不思議なことにゴツい印象は消えすっきりした印象に。



「素で自然とつながる家」の吉村障子



先日完成した新しい創の家にこの吉村障子が導入されました。
幅2.6メートル、天井高いっぱいまで開口させ、木製枠のサッシが壁内に引き込める様子は圧巻。そしてそこに建てつけられた2枚の大きな吉村障子が、室内に落ち着いた雰囲気を与えながら、開放感を際立たせています。
なるほど、障子は一枚一枚の存在感を消すことで部屋全体の落ち着きやすっきりした印象を際立たせる。これこそがこの障子のデザインの狙いなんですね。

障子は和の家のもの、木の家=和風。そんなふうに捉えられがちですが、障子があってもモダンな空間は可能だし、木をふんだんに使ってもすっきりした空間はつくれる。
簡素でありながら品の良さや上質感、凛とした雰囲気は、木の家でこそ叶うのかもしれません。



吉村障子の製作は上杉さんによる


2014年10月13日月曜日

白い壁


ひとくちに白壁と言っても、いろんな壁があります。

漆喰は調湿性にすぐれ空気の殺菌効果もある。なにより木の家と相性が良く、手触りも雰囲気も抜群です。

壁紙にも木の家に似合うのがあります。創の家で使うオガファーザーは、ウッドチップと再生紙だけでできていると言うだけに塩ビクロスのような安っぽさはなく、漆喰ほどではないけど、落ち着いた雰囲気もいい。

同じ白壁でも素材と仕上げで部屋の雰囲気はまったく違うものになるので、とくに大壁仕上げで天井も真っ白な空間ではどんな素材、仕上げにするかが重要です。

では、部屋の雰囲気を変える原因は何かと考えると、光の反射と拡散ではないかと考えました。
漆喰壁の部屋がやわらかい雰囲気に感じるのは、光の反射率が低いからではないのか。

そう考え調べると、漆喰の反射率は高いことがわかりました。
数字でいうと、反射率は75~85%。それに対し壁紙は淡い色のもので40~70%。ちなみに白タイルで70~80%なので、漆喰の反射率の高さがわかります。
なのに漆喰壁の部屋では、同じ光の量でもやわらかでやさしく感じるのはなぜか。

それは、漆喰の成分であるカルシウムが光を拡散させやすいからなのだそうです。
つまり漆喰は光の反射率が高いが、拡散効率にもすぐれるので、光が部屋全体に柔らかく行き渡るというわけです。

反射率と拡散率が高いということは、より少ない照明で部屋が明るくできるということなので、省エネにもいいんですね。

ちなみに、漆喰に含まれる炭酸カルシウムは液晶パネルの反射材にも欠かせない物質だそうで、この世の光を左右する存在ということがわかります。


漆喰は塗りの技が肝心 。チーム創 千葉左官の鏝さばきが冴える




2014年8月14日木曜日

いってきます



江戸の言葉では、「格好いい」ではなく、「様子がいい」と言うのが正しいのだそうです。「格好がいい」とは、元は関西の言葉なのだとか。
同じように、「行ってらっしゃい」ではなく、「行っておいで」が江戸流だとか。

ところで「いってらっしゃい」とは、「行って」と「いらっしゃい」が合わさった言葉で、「行って」、「帰っていらっしゃい」と呼びかける意味があるのだそうです。
そして返事の「いってきます」には、「行って」「帰ってきます」というふたつが合わさった言葉で、「いってらっしゃい」と見送る人に、無事に帰ってくることを約束する意味があるのだとか。

また「気をつけて」には、外出先で邪気にとらわれないよう気持ちをしっかりしてという意味があるそうです。

毎日の何気ないあいさつもこうして意味を知ると、深く納得します。
出かけるとき、見送るとき、こんな意味を思いながら言葉をかければ、余計な心配もせずに済みそうです。







2014年7月14日月曜日

湖畔の別荘へ


日光 中禅寺湖
観光客でにぎわう辺りから少し離れた湖畔の森を歩くと、イタリア大使館別荘があります。先日、そこへゲストとして招かれ行ってきました。



なんていうのは真っ赤なウソ。
昭和3年から平成9年までイタリア大使館別荘として使われてきた建物と周辺が、記念公園として一般に公開されています。

明治の中頃から昭和初期にかけ、中禅寺湖畔には各国の大使館や外国人の別荘が建てられ、箱根と並ぶ国際避暑地としてにぎわったのだそうです。現在も周辺にはフランス大使館とベルギー大使館の別荘がありますが、なるほど水と緑に満ちた風景は、ヨーロッパの避暑地を思わせます。






今回、ここで見ておきたいと思ったのは、建物の面白さ。全体としてヨーロッパ風の建物ですが、使われているのは見慣れた杉材。外装は板張りではなく杉皮張りにしてあるなど和の趣きを強く感じさせるけど、内装の意匠を見ると単に和洋折衷ではない不思議な魅力を感じさせます。

外装で特徴的なのは、杉皮とこけら板の継ぎ目を割り竹で補強してあること。しかもそれが市松模様になっていて、機能だけでなく美しさにも気を配っていることがわかります。








内装では天井と壁もすべて杉皮張りですが、部屋によって市松張りや網代張り、矢羽張りなどが併用されていること。考えてみればヨーロッパでは、矢羽のように寄せ木で床を張るパーケット床がメジャーなので、こうした意匠は珍しくないのでしょう。






この建物の設計は、アントニン・レーモンド。この人は帝国ホテル新館を設計したフランク・ロイド・ライトのスタッフとして来日したのだそうです。
彼がどんな考えでこの別荘を手がけたのかはわかりませんが、洋風の建物を日本の杉材で仕上げていること、そして随所の仕事の細やかさを見ると、建築に当たっては日光周辺の職人の技をしっかり生かしていることがわかります。

この別荘を一般公開するに当たっては、建築当初の建物は一旦解体し、基礎を造り直したうえで、再度建て直したのだそうです。ただし、構造材やガラスなど使える材料はすべて再利用し、劣化が激しい外壁や内装をリフレッシュしました。もちろん外装や内装の意匠も改築前のままで、使われた材料の多くは地域材。そしてこの改築でも、建築当初と同じように伝統的な職人の技が生かされています。

古い建築に和洋折衷を見つけるのはそう珍しくはありませんが、モダンながら地域性を強く感じさせる建築は貴重です。木を生かした建物は別荘にふさわしいナチュラルで落ち着いた雰囲気があります。そして何より窓から眺める浮世離れした風景が、建築を引き立てています。










2014年6月27日金曜日

上棟式の期待と緊張


家づくりに関わる人々が集い、どうか良い家になりますように、工事の安全と家の無事を祈る上棟式。建前、棟上げとも言います。

家づくりの全行程からすれば3割程度の時点で行われるので、素人考えでは本格的な工事に先がけ行うと思いがちですが、棟梁からすれば家づくりの最大の山場なのだとか。とくに手刻み加工による木組みの家では、期待と緊張がいっそう高まります。

図面に従い用いる木を選び、墨付けを行い、継手や仕口は丁寧に手刻みする。機械加工ならあっという間ですが、家一棟分の手刻みには相当な時間がかかります。まさに気の遠くなるような作業。30坪ちょっとの家で、墨付けと手刻みに3ヶ月弱を要したこともあります。

上棟の日、こつこつ丁寧に仕上げた材料が組み合わされ、家のカタチが整っていきます。無形から有形へ、想い描いた家が出来上がっていくのは大きな喜びでしょう。生まれたばかりのわが子が育っていくのを見るのに似ているのかもしれません。同時につくり手にとっては、図面の読み間違いはないか、加工の具合はどうかなど、それまでの仕事の出来が問われるときでもあります。難しく手間がかかる仕事ほど緊張し、その分期待も喜びも大きくなる。上棟式とは、まさしく大工にとっていちばんの晴れ舞台なのです。

近頃、上棟式はだいぶ簡略化されています。餅まきや投げ銭をするのはごく少数で、式すら行わないことも珍しくありません。それは、家づくりの効率化が進むのと無縁ではないと言えます。さほどの困難や緊張もなく、それなりに期待通りの家が簡単に出来るから、祝う気持ちや願いも薄れているのかもしれません。
しかしどんなに効率化されても、家づくりは一生に一度の大仕事であることに変わりはなく、わが家に託す願い、期待にも今昔の違いはないでしょう。
家づくりへの気持ちを改めて見つめなおす。そんな意味でも上棟式を行うのは大切な気がします。





2014年5月26日月曜日

結婚おめでとう!



五月晴れの佳日
チーム創の若頭 タッカと、新婦みゆきちゃんがめでたくゴールインしました。

近頃のウェディングは、人前式とか近しい人だけのパーティースタイルなど内向きになっていますが、ふたりが選んだのは神前式と、親戚、知人、友人など大勢を招いての披露宴という王道スタイル。披露宴には130人を超える人々が列席しました。

こんな祝いの席にしたのも、義理堅く、気くばりが利くタッカらしい選択です。
みゆきちゃんもそんな彼の人柄に惹かれたのでしょう。

チーム創のメンバーは、タッカの友人らとともに、祝いの神輿で披露宴をお練りしました。しかも新郎を担ぐというおまけ付き。それはまさしく紅白大トリの北島三郎のよう^^
晴れの門出を盛大に盛り上げました。

それにしても、みゆきちゃんはいつにも増して美しく、タッカも男前でした。
これからふたりには嬉しいことも困難も待ち受けることでしょう。
それでも忘れないでほしいのは、キミたちには一度に130人超える人を集め、みんなを笑顔にする力があるということ。あるいは、キミたちには集まった130人の期待がかかっているということでもあります。

結婚おめでとう。
どうか、やさしく、強く、揺るがない家庭をつくってください。








2014年3月5日水曜日

マイ箸のススメ(だそうです)


なぜ、マイ箸なのか?

割り箸の使い捨ては、森林資源の枯渇を早め地球温暖化など環境負荷を高めるから。しかも割り箸の原材料は途上国の資源に頼っているから問題がある。

その一方で、国産の間伐材や端材を原材料にすれば森林の生育や資源再利用に役立つから、割り箸を使うのは良いことだ、という意見もあります。
しかし、国産材の利用ではコスト高になってしまうという弊害が生まれる。

ちなみに、出回っている割り箸のほとんどは中国産だそうですが、中には漂白剤、防カビ剤、防腐剤が残留しているものがあり、人体への影響が懸念されるとか。

で、結局なぜマイ箸なのかを、愛用者に聞いてみました。
彼は箸だけでなく、木のスプーン大小、バターナイフ、ついでに箸置きまで持ち歩いている変態・・・いえ、凝り具合です。





ここまでになると、環境や健康のためというより、スタイルのためが大きな理由になります。
ぶっちゃけて言えば、自己満足です。
でも、自分らしいスタイルを持つのは、難しいことを議論するより大事な気がします。

それと、どこで食事をしても自分の手に馴染んだ道具だとより美味しく感じられるのだそうです。

お気に入りの箸とスプーンを偲ばせたケース(バック?)もこだわりを感じさせますね。
この頑丈そうな帆布ケース。じつは、鑿入れなんだそうです。
大工さんが木を刻むのに使う、あの鑿(ノミ)です。

言われると、なるほど!と思いました。
機能性の高い道具に、本来の目的以外の使い道を見つけるなんて、よくぞ思いついたものです。

ならばこれを改良して、ペンケースにも使えるだろうと思いました。