2015年11月12日木曜日

技と工夫のアーカイブ⑨ 『白い空間に根曲り木のある家』 〜引戸にする理由〜

『白い空間に根曲り木のある家』  竣工:平成23年12月





家の間仕切りといえば引戸かドアですが、私たちが建てる家では要望がない限り引戸にします。和室には引戸、洋室にはドアという選択は過去のもの。私たちはドアは使いません。理由は空間の有効利用と安全のためです。ドアはその大きさの分開閉に必要なスペースを空けなくてはならず、開けたままだと風などで閉まってしまうこともあります。その力が大きく、閉まるドアに手を挟んでしまったら大怪我の原因になってしまいます。
一方、引戸は風などで意図せず閉まることもなく、開閉のための空間も必要ありません。ただ一つ、開けた時に戸を収納する必要があるので、その分大工工事の手間がかかります。

私たちの家の建具はほとんどがオリジナルで既製品はありません。多くは軽くて見た目もきれいな節のない杉板で造りますが、オリジナルなら材料も選べるし、何より空間に合わせ自由な大きさにできるのが魅力です。
この家では空間を広く見せたいという狙いから、玄関ホールと居室の開口を広くしました。ドア一枚なら開口部は約90cmですが、この家では約3mもあり、1.5m幅の2枚の引戸で仕切られます。しかもそれは壁面に収納できるので、全開にするとほとんど間仕切りのない広々とした空間にすることができるのです。

安全性や空間の有効利用など、理想の住まいを追求すると既製品では対応できず、独自のものを造るしかなくなります。その分だけ造り手の作業は多くなりますが、手間ひまを惜しまない家づくりが快適な暮らしにつながると信じています。





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