2015年9月10日木曜日

技と工夫のアーカイブ① 「創の家」 〜むくり屋根と採光〜

『創の家』  竣工:平成20年3月




株式会社建築工房 創は、来年8月に創業10年を迎えます。
創業間もなく取り組んだのが自宅兼事務所の「創の家」の新築です。狭い敷地だけにいかに効率的な間取りにするかに腐心しました。南側は隣家が迫り、北向きの敷地であるために居室への採光をどう確保するかも課題でした。その一方で、自分たちが志す家づくりの個性を表し、会社の看板となるような家にしようという思いもありました。


むくり屋根と採光のこと
屋根はふくらむように湾曲していますが、これは数寄屋や茶室建築に見ることができる伝統的な構造です。同じ屋根形状の代表的な建物には京都の「桂離宮」があります。
この“むくり”とは対照的なのが“そり”で、寺社建築に見られるように反った形状になります。総二階で決して大きくない建物ですが、このむくり屋根により外観の個性が表せたと思っています。

「創の家」のもうひとつの課題は、北向きの居室にいかに採光を確保するかでしたが、それを解決したのが、屋根形状に沿うように設けた3連の高窓、さらに頭上から足元までの高さがある窓です。これにより日の光は射さないまでも2階居室の明るさを確保できました。

この2階北面の窓プランは採光を確保しただけでなく、自分たちがどんな家づくりを目指すかという個性を表現する役割も果たしました。それは床から天井までの窓ごしに、室内の伝統的な木組み構造が見えるためです。
通常なら外から2階居室を見上げても平面の天井が見えるだけですが、梁組が見える構造にしたことで、高い天井の開放的な室内に木のやさしさが映えること、そしてそれをつくる確かな技を持つことを通りを歩く人々にアピールできたのです。

木の良さ、魅力を生かす家づくりは私たちが最も得意とするところですが、「創の家」の木組み構造などについては次回紹介します。








0 件のコメント:

コメントを投稿