2015年9月28日月曜日
技と工夫のアーカイブ③ 『創の家』 〜壁の仕上げ〜
『創の家』 竣工:平成20年3月
壁仕上げの「大壁」と「真壁」の違いをご存知ですか?
簡単に言えば「大壁」は、構造材(柱)を壁材で覆い隠し表面に出ないようにします。一方「真壁」は構造材を見えるように仕上げます。
日本家屋ではほとんどが真壁仕上げでした。しかし住宅の工業製品化、とくに室内の壁仕上げで塗りよりクロス貼りが多く採用されるようになったことで大壁仕上げが多くなりました。真壁にするには手間と技を必要とするのです。もちろん純和風の家が少なくなったことも大きな理由です。
「創の家」では、外壁も真壁にしています。仕上げは石灰モルタル掻き落としと呼ぶもので、モルタルに骨材となる細かな石を混ぜ、一旦平面に塗った後、表面を掻き落として仕上げます。「岩肌仕上げ」とも言うように、表面の仕上がりは岩肌のようにザラザラします。
壁の骨材になる石には、白竜石、寒水石、珪砂などがありますが、粒状の石の形状や色味に違いがあり、それがそのまま壁の仕上がりに影響します。「創の家」では白竜石を混ぜていますが、透明で丸みを帯びているため、日差しの光を柔らかく反射する特徴があります。一方、珪砂は土色が濃いので、壁材にすると落ち着いた雰囲気になります。
現在、ハウスメーカーなどでは窯業系の壁材が多く用いられています。
施工が簡単で汚れにくいことや、タイル風や木材風など様々なテクスチャーに似たものが用意されているなどのメリットがありますが、無垢材など自然素材の家には似合わないような気がします。
2015年9月16日水曜日
技と工夫のアーカイブ ② 『創の家』 〜根曲がりの太鼓梁〜
『創の家』 竣工:平成20年3月
私たちがつくる家では、家を支える梁組を見えるようにすることが多いです。
とくに多く使うのが根曲がりの杉材などを太鼓仕上げにすること。「太鼓梁」と呼ぶそれは丸太を四角に製材するのではなく、一辺ないし二辺は丸太の形状を残し製材します。これにより構造材としての木の強さを生かすことができ、見た目にも木のたくましさややさしさを感じることができます。
根曲がり材とは根元が曲がった木材のことです。木目の美しさはまっすぐな木材より劣りますが、根曲がり材にはその分強さがあります。
まっすぐで木目が整った木はおもに陽当たりのいい南斜面で育ちますが、根曲がりの木は陽当たりの悪い北斜面で育ちます。悪条件で生まれた木は、懸命に陽射しを求めて育った結果根が曲がってしまいます。しかしそこには強さが備わるのです。
恵まれた環境ですくすく育つより、逆境をはね除け育った方が強い。木も人も同じなのですね。
さて創の家の小屋組は、根曲がりの太鼓梁の上にさらに二重三重の梁がかかります。それは構造の力強さを印象付けながら、天井高を実際より高く感じさせるという効果もあります。
この太鼓梁ですが、創の家の後に手がけた家ではより太い材料を使うようになり、さらに強く、たくましさを感じさせています。
2015年9月10日木曜日
技と工夫のアーカイブ① 「創の家」 〜むくり屋根と採光〜
『創の家』 竣工:平成20年3月
株式会社建築工房 創は、来年8月に創業10年を迎えます。
創業間もなく取り組んだのが自宅兼事務所の「創の家」の新築です。狭い敷地だけにいかに効率的な間取りにするかに腐心しました。南側は隣家が迫り、北向きの敷地であるために居室への採光をどう確保するかも課題でした。その一方で、自分たちが志す家づくりの個性を表し、会社の看板となるような家にしようという思いもありました。
むくり屋根と採光のこと
屋根はふくらむように湾曲していますが、これは数寄屋や茶室建築に見ることができる伝統的な構造です。同じ屋根形状の代表的な建物には京都の「桂離宮」があります。
この“むくり”とは対照的なのが“そり”で、寺社建築に見られるように反った形状になります。総二階で決して大きくない建物ですが、このむくり屋根により外観の個性が表せたと思っています。
「創の家」のもうひとつの課題は、北向きの居室にいかに採光を確保するかでしたが、それを解決したのが、屋根形状に沿うように設けた3連の高窓、さらに頭上から足元までの高さがある窓です。これにより日の光は射さないまでも2階居室の明るさを確保できました。
この2階北面の窓プランは採光を確保しただけでなく、自分たちがどんな家づくりを目指すかという個性を表現する役割も果たしました。それは床から天井までの窓ごしに、室内の伝統的な木組み構造が見えるためです。
通常なら外から2階居室を見上げても平面の天井が見えるだけですが、梁組が見える構造にしたことで、高い天井の開放的な室内に木のやさしさが映えること、そしてそれをつくる確かな技を持つことを通りを歩く人々にアピールできたのです。
木の良さ、魅力を生かす家づくりは私たちが最も得意とするところですが、「創の家」の木組み構造などについては次回紹介します。
株式会社建築工房 創は、来年8月に創業10年を迎えます。
創業間もなく取り組んだのが自宅兼事務所の「創の家」の新築です。狭い敷地だけにいかに効率的な間取りにするかに腐心しました。南側は隣家が迫り、北向きの敷地であるために居室への採光をどう確保するかも課題でした。その一方で、自分たちが志す家づくりの個性を表し、会社の看板となるような家にしようという思いもありました。
むくり屋根と採光のこと
屋根はふくらむように湾曲していますが、これは数寄屋や茶室建築に見ることができる伝統的な構造です。同じ屋根形状の代表的な建物には京都の「桂離宮」があります。
この“むくり”とは対照的なのが“そり”で、寺社建築に見られるように反った形状になります。総二階で決して大きくない建物ですが、このむくり屋根により外観の個性が表せたと思っています。
「創の家」のもうひとつの課題は、北向きの居室にいかに採光を確保するかでしたが、それを解決したのが、屋根形状に沿うように設けた3連の高窓、さらに頭上から足元までの高さがある窓です。これにより日の光は射さないまでも2階居室の明るさを確保できました。
この2階北面の窓プランは採光を確保しただけでなく、自分たちがどんな家づくりを目指すかという個性を表現する役割も果たしました。それは床から天井までの窓ごしに、室内の伝統的な木組み構造が見えるためです。
通常なら外から2階居室を見上げても平面の天井が見えるだけですが、梁組が見える構造にしたことで、高い天井の開放的な室内に木のやさしさが映えること、そしてそれをつくる確かな技を持つことを通りを歩く人々にアピールできたのです。
木の良さ、魅力を生かす家づくりは私たちが最も得意とするところですが、「創の家」の木組み構造などについては次回紹介します。
2015年9月7日月曜日
創の家づくりの歩みを、技と工夫で振り返る
『完成見学会』などでお会いする方々に、“創さんらしい家だね”と言っていただくように、無垢の木や素材の良さを生かす創の住まいには、独特の雰囲気があるようです。
ご覧いただくどの建物にも木のやさしさや温かみ、そして清々しさを感じていただけるのは光栄なことですが、見た目と全体の雰囲気は似ていても、完全オーダーメイドで建てる創の住まいにはひとつとして同じ建物はありません。
例えば、換気と熱効率のために有効な「越屋根」は数件の建物で採用していますが、細かな工夫や仕上げはそれぞれ違うのです。
創では、住まう人の快適な暮らしのために設計プランや技に新しい工夫やアイディアをどんどん取り入れ、成果があれば次の住まいづくりに生かしています。または課題が見つかればつねに改善を重ねています。
まさに実績と工夫を生かす家づくり。創では最新の家が最善の家なのです。
というわけで、ホームページの「ギャラリー」で紹介する住まいには、それぞれその時々の新しい工夫やアイディア、技が盛り込まれており、当然、その家でしか見られない取り組みがあります。
このブログでは、写真だけではわからないそんな工夫や技をシリーズで紹介しながら創の家づくりの歩みを振り返り、“創らしい”家の魅力を考えてみます。
いわば清々しい家のためのチャレンジをまとめたアーカイブ集です。
2014年11月11日火曜日
障子は和の家のものか
吉村順三は、日本の伝統とモダニズムを融合させた建築家です。
機能性を追求したデザインはモダンではあるけど、どこにいても居心地が良いと評されるのは彼が日本人の生活文化を徹底的に検証し、木の温かみが生きる簡素な生活空間づくりを追求したからといわれます。
彼の作品は建築だけでなく、椅子や照明、そして建具にも及びますが、今回紹介したいのは障子です。
「吉村障子」と呼ばれるそれは、框(障子の外枠)と組子(格子になる縦横の材)の寸法を18ミリに統一したもので、複数の障子を立てたときに1枚に見えるようにしています。框と組子の寸法に差があると障子一枚一枚が際立つけど、同寸なら一体化できるというわけです。
通常、組子は框より細いので、組子が太い吉村障子はゴツい印象があります。しかし大きな開口部に複数枚が立つと、不思議なことにゴツい印象は消えすっきりした印象に。
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「素で自然とつながる家」の吉村障子 |
先日完成した新しい創の家にこの吉村障子が導入されました。
幅2.6メートル、天井高いっぱいまで開口させ、木製枠のサッシが壁内に引き込める様子は圧巻。そしてそこに建てつけられた2枚の大きな吉村障子が、室内に落ち着いた雰囲気を与えながら、開放感を際立たせています。
なるほど、障子は一枚一枚の存在感を消すことで部屋全体の落ち着きやすっきりした印象を際立たせる。これこそがこの障子のデザインの狙いなんですね。
障子は和の家のもの、木の家=和風。そんなふうに捉えられがちですが、障子があってもモダンな空間は可能だし、木をふんだんに使ってもすっきりした空間はつくれる。
簡素でありながら品の良さや上質感、凛とした雰囲気は、木の家でこそ叶うのかもしれません。
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吉村障子の製作は上杉さんによる |
2014年10月13日月曜日
白い壁
ひとくちに白壁と言っても、いろんな壁があります。
漆喰は調湿性にすぐれ空気の殺菌効果もある。なにより木の家と相性が良く、手触りも雰囲気も抜群です。
壁紙にも木の家に似合うのがあります。創の家で使うオガファーザーは、ウッドチップと再生紙だけでできていると言うだけに塩ビクロスのような安っぽさはなく、漆喰ほどではないけど、落ち着いた雰囲気もいい。
同じ白壁でも素材と仕上げで部屋の雰囲気はまったく違うものになるので、とくに大壁仕上げで天井も真っ白な空間ではどんな素材、仕上げにするかが重要です。
では、部屋の雰囲気を変える原因は何かと考えると、光の反射と拡散ではないかと考えました。
漆喰壁の部屋がやわらかい雰囲気に感じるのは、光の反射率が低いからではないのか。
そう考え調べると、漆喰の反射率は高いことがわかりました。
数字でいうと、反射率は75~85%。それに対し壁紙は淡い色のもので40~70%。ちなみに白タイルで70~80%なので、漆喰の反射率の高さがわかります。
なのに漆喰壁の部屋では、同じ光の量でもやわらかでやさしく感じるのはなぜか。
それは、漆喰の成分であるカルシウムが光を拡散させやすいからなのだそうです。
つまり漆喰は光の反射率が高いが、拡散効率にもすぐれるので、光が部屋全体に柔らかく行き渡るというわけです。
反射率と拡散率が高いということは、より少ない照明で部屋が明るくできるということなので、省エネにもいいんですね。
ちなみに、漆喰に含まれる炭酸カルシウムは液晶パネルの反射材にも欠かせない物質だそうで、この世の光を左右する存在ということがわかります。
漆喰は塗りの技が肝心 。チーム創 千葉左官の鏝さばきが冴える |
2014年8月14日木曜日
いってきます
江戸の言葉では、「格好いい」ではなく、「様子がいい」と言うのが正しいのだそうです。「格好がいい」とは、元は関西の言葉なのだとか。
同じように、「行ってらっしゃい」ではなく、「行っておいで」が江戸流だとか。
ところで「いってらっしゃい」とは、「行って」と「いらっしゃい」が合わさった言葉で、「行って」、「帰っていらっしゃい」と呼びかける意味があるのだそうです。
そして返事の「いってきます」には、「行って」「帰ってきます」というふたつが合わさった言葉で、「いってらっしゃい」と見送る人に、無事に帰ってくることを約束する意味があるのだとか。
また「気をつけて」には、外出先で邪気にとらわれないよう気持ちをしっかりしてという意味があるそうです。
毎日の何気ないあいさつもこうして意味を知ると、深く納得します。
出かけるとき、見送るとき、こんな意味を思いながら言葉をかければ、余計な心配もせずに済みそうです。
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