2016年1月28日木曜日

技と工夫のアーカイブ19 『大屋根ささえる手仕事の家』 〜外構・庭づくり〜


『大屋根ささえる手仕事の家』 竣工:平成26年4月





外観は家の印象を大きく左右します。どんな人が住んでいるのか、個性的であるほど興味深くなりますが、それを豊かにするには外構や庭づくりが大きな役割を果たすと思います。

この住まいのいちばんの特徴は大屋根です。切妻屋根の片側が大きく伸びた形は、建物幅を大きく見せ、どっしりと印象を際立たせます。
そしてゆったりとした印象をより強く感じさせる要因が外構プランです。
玄関まで伸びるアプローチをスロープ状にしたのは高齢のおばあさんの安全のためですが、傾斜が緩やかで正面から建物に向かいまっすぐ伸びるので、遠近法により敷地が広く見え、結果的に建物も大きく見えるという効果が生まれました。
さらにオリジナルで作ったコンクリート打ち放しの門柱、山もみじや南天などの植栽が建物を彩ります。

満足の行く外構、庭づくりには敷地面積や環境、そして予算も関係しますが、わが家をより格好よく見せるために外構にこだわってみるのもいいかもしれません。





2016年1月22日金曜日

技と工夫のアーカイブ18 『のびのび太陽と暮らす家』 〜家の吉方位〜

『のびのび太陽と暮らす家』  竣工:平成25年11月





津波被災で家を失ったご家族が、新たに選んだ土地は田園風景が広がる地でした。朝から晩までどこにいても暖かな陽射しに包まれる場所。育ち盛りのふたりのお子さんのことを第一に考え選んだ土地ですが、その素晴らしい環境は、高齢のご両親とご夫婦にも元気を与えてくれるようです。
この家の設計は、辰巳の方向に開け、陽射しに恵まれる立地の良さを生かすことを最優先に考えました。

陽の光を家中に採り入れるためにまず工夫したのは、南東(辰巳)に向いただんらんの間の開口を大きくすることです。二間幅、およそ3.6mの掃き出し窓には障子戸を立てましたが、広々とした印象を際立たせるために一間幅の大きな戸を二枚にし、さらにそれを壁内に収められるようにしました。これにより障子を全開にすれば、部屋の幅いっぱいに陽の光が差し込みます。

また、だんらんの間につながるご両親の居室は南東と南方向に開けていますが、ここでも陽射しを採り入れるよう2面コーナーに掃き出し窓を設けました。朝から夕方まで陽射しが差し込むこの部屋は、家中で最も暖かです。

一般的に辰巳の方向には門や玄関を作るのが良いとされますが、その家相通り、この住まいでは玄関も辰巳を向いています。明るい日差しが注ぐ辰巳の方向は、ご家族にとっても吉方位なのです。



2016年1月14日木曜日

技と工夫のアーカイブ17 『食・石川』 〜店舗施工〜




住宅も店舗も工場も、すべての建築は設計と施工から成ります。
創では自社で両方を手がけますが、ときには施工だけを請け負うこともあります。
石巻で長くすき焼きなど肉料理の店として親しまれてきた『食・石川』の新築も施工を担当。設計は石巻に事務所を構える冨永明日香さんです。
そんなわけでこの建物にはいつものテーマワードはありません。

お店は不特定多数の方が訪れるので耐久性を確保しなければなりません。増して靴履きのまま利用するので床材も住宅と同じというわけにはいきません。
そこで選ばれたのがナラの木。机やテーブルなどにも用いられるように、強く美しい木目が特徴です。
このナラ材の床ときれいにマッチするのが薪ストーブが置かれる土間。ただのモルタルでは味気ないので、土壁の割れを防ぐためのつなぎとして使われるスサを混ぜ込み、温かみのある土間床としました。お店全体のナチュラルな雰囲気を引き立てていると思います。また個室との境の引き戸の把手には埋れ木材を用いましたが、こうした細かい工夫も店の個性を際立たせます。

店舗建築や施工のみを請け負うことはそう多くありませんが、たくさんの人と関わり、いつもと
違うスタイルで仕事を進めることは、刺激的で新しい発見を与えてくれます。



2016年1月7日木曜日

技と工夫のアーカイブ16 『木組みの空に雲を見つける家』 〜収納スペースを自在に〜

『木組みの空に雲を見つける家』 竣工:平成25年5月






ハウスメーカーのようにプランが決まっていると、収納を自在につくるのは難しいものです。結果的に家具が多くなり、部屋が狭くなってしまうことも。その点私たちの住まいは完全オーダーメイドなので、収納スペースを自由にでき、効率性と部屋の広さを犠牲にせず、おまけに家具を揃える出費も抑えられます。

この住まいでは、ほとんどの収納家具を造り付けで揃えました。
1階だけを見ても、玄関とつながるシューズクローゼットは約2畳の広さで多目的に使えます。キッチンでは食品庫に加え、幅約2.7m、高さ1.8mの壁面収納とアイランドカウンターを兼ねた食器棚を造作しました。
特にこのアイランドカウンター兼の食器棚は、片側は食器収納、もう片側にはグラス類を収納できるようにし、さらには足元に大きなゴミ箱が収まるよう工夫。カウンターにはオーブンレンジなども置きつつ、サブキッチンとして使いやすい広さと高さにしています。
またダイニングテーブルの幅と揃えたことで、サブテーブルとしても使える優れものです。

施主と製作を手がけた職人と3人で検討を重ねただけに、一切無駄がなく機能性に優れるのは、オーダーメイドだからこそ実現できたもの。ヒノキ材で造ったので木組みの家に見合う美しさも魅力です。



2階には天井高いっぱいの本棚やデスクも造作

2015年12月24日木曜日

技と工夫のアーカイブ15 『木組みの空に雲を見つける家』 〜強く美しい階段〜


『木組みの空に雲を見つける家』  竣工:平成25年5月




『やわらかな光が注ぐ高床の家』に続き、2年連続で木造住宅コンクールで受賞を果たした住まいです。『木組みの空に雲を見つける家』という不思議なネーミングは、京都の町家建築で見られる梁組のイメージから名付けました。2階の天井は特に高く、梁組が二重、三重に重なる様子は、空に浮かぶ雲のように見えます。

伝統的な木組みの技をふんだんに取り入れた中でも特に見栄えするのが、タモ材で造ったスケルトン構造の階段です。同じ構造の階段は『白い空間に根曲り木のある家』でも作りましたが、あちらが桁を鉄骨で造ったのに対し、こちらでは桁も手すりも踏み板も全てタモ材で造りました。
課題は木造でスケルトンというシンプルな構造をどう実現するかです。
木造は耐久性の面で鉄骨より劣るので、強くするには補強を多くしなければなりませんが、強さだけを求めると見た目の美しさが損なわれます。この家では玄関を入ると階段が見えるプランにしたので見栄えも重要でした。

施主と棟梁とともにどんな造りにしようか検討を重ねましたが、最終的には棟梁の勘と技に委ねることに。そうして出来上がった階段は、単純な構造ながら20cmの太さの桁が力強さを感じさせ、タモ材の美しい木目が温もりを感じさせます。
荷物を届けに来た宅配業者が、思わず「かっこいい階段ですね」と口にするというほど印象的な見栄えは、木組みにこだわったこの家を象徴しています。


2015年12月16日水曜日

技と工夫のアーカイブ14 『コの字の家』 〜敷地のカタチを家の個性に〜

『コの字の家』 竣工:平成25年1月




若干変形ぎみの横長の敷地をどう生かすか。
考え抜いた結論は、平屋で、東西にご家族のプライベート空間とだんらんの空間を振り分け、真ん中に水まわりなどの共有スペースを配置するということ。
その結果、家のカタチは「コの字」になりました。

玄関を入って左に、ご夫婦の寝室と子供部屋。右にだんらんの間とダイニングキッチン。
両方の空間をつなぐ長い廊下は日当たりが良いので、大きな窓際にベンチを設けくつろぎを演出しました。

決して大きな建物ではありませんが、目的に合わせた間取り配置とすることで
数字以上の広さを感じさせてくれます。

特に部屋の壁の色を使う人の個性に合わせ変えたことで、バラエティ豊かな家になりました。黒の外壁色も個性的です。







2015年12月10日木曜日

技と工夫のアーカイブ13 『光風が海と陸をつなぐ家』 〜キャットタワー〜

『光風が海と陸をつなぐ家』 竣工:平成25年1月




猫が大好きな9人家族の住む家です。
設計ではそれぞれのプライバシー空間を確保するのが大変でした。
そんな中で家族が集う「だんらんの間」は、ゆとりを持たせることができましたが、空間のアクセントになっているのが、キャットタワーです。

ホームページで「スプーン1本からちょっとした棚板まで‥」とうたっているように、木で作れるものならなんでも工夫しますが、キャットタワーを作ったのはこれが初めて。
とはいえ、細工に手間がかかったというより、猫が喜びそうな節や捩れのある木を見つけるのに苦労しました。

見つけたのは地松の程よい太さのもの。これ以上太いと室内で邪魔になるし、細ければ猫が満足しません。
日当たりのいい窓辺に設けたので、日向ぼっこにも最高なはず。
猫がいない時には、不思議なオブジェのようにも見えます。